よく泣く息子の涙の奥に触れた瞬間

3歳になった息子が幼稚園に入った。

何が悲しいのかと思うほど、
毎日泣いた。
泣かない日はないくらい。

そこで母は一計を案じた。

心の強い子に育てようと思い
「剣道」
の道を選んだ。

剣道着を身につけると結構様になった。
「これで大丈夫」

しかし道場に入る前から聞こえる、
道場内を響き渡る
「イヤー」
「バシバシ」
竹刀の音。掛け声。
道場内の様々な音に、
息子は小刻みに震えていた。

それから3ヶ月経った。
息子は道場の片隅に座っていた。

母は息子の姿を見た後、
「竹刀」を持って、
道場に入った。

ただ体が自然にそう動いていた。

先生の許可を受けたと言っても、
周りがざわついた。

そのとき、
息子が立ち上がった。

「僕やるよ。お母さんを守ってあげる」

竹刀を振り上げる力は弱く、
目には涙を溜めていたが、
「守る」強さはあった。

母は安心した。

「強さ」
は色々あるけれど、

「守る愛」
に勝る強さはないと。